1999年8月に設置された岡山県「備前ブッロクごみ処理広域化対策協議会」は1市12町で構成され、広域でごみ処理施設の建設を進めることを目的としたものである。これに対し2001年10月から構成町の議員有志が「東備町村議員ネットワーク」(熊山町・吉永町・佐伯町・山陽町・和気町・赤坂町の議員有志)を立ち上げて、ごみは広域での処理は減量化に逆行し、大型処理施設の建設は時代に逆行するものだとの認識で毎月1回の情報交換・勉強会をしてきた。結果、2010年1月構成自治体が次々と脱退し、約10年目で広域事務組合まで立ち上げながら破綻した。この顛末の報告のなかから、上記のごみ広域の誤りと一部事務組合の弊害を検証して、参考にしていただければ幸甚です。
あるテレビ番組の放映を機に、埼玉県所沢のほうれん草ダイオキシン汚染ニュース騒ぎから 、1997年1月ごみ処理に係わるダイオキシン類発生防止等ガイドラインが出る。これにより、あの悪名高い「ごみ処理の広域化計画について」厚生省生活衛生局水道環境部環境整備課長通知(1997年5月28日)が出されて日本中の自治体が大騒ぎになった。
岡山県もこれをもとに1998年3月「岡山県ごみ処理広域化計画」をつくり、県内6ブロック構想をぶち上げた。その後町村合併のごたごたにより、第2次岡山県廃棄物処理計画(2007年3月)にリニューアルしたものの、合併により市町村の名称がかわっただけで、広域化計画はそのままであった。
備前ブロック協議会は99年〜06年の約8年間は旧1市12町の負担金と称して毎年150万円づつ総額1億4400万円無駄にしてきた計算になる。2007年からも3市1町になり派遣された県職員の人件費まで負担してきた。東備町村議員ネットワークは、2003年1月、11月、2004年5月の3回にわたって、備前ブロックごみ処理広域化対策協議会への申し入れや、協議会の正副議長との懇談会を重ねてきた。2004年6月には上勝町への視察も行った。その間、建設計画は3地区(和気町大中山・熊山奥吉原・千躰)が候補に上がったが、地元住民の反対によりすべて頓挫してきた。その後2005年の町村合併によりネットワークは解散する。
▼合併後の主な経緯
検証(1) ごみ処理の広域化計画の無謀性 国の通達にあわてて作った県の6ブロック構想はそもそも自治体の実情は無視されたものであった。長年自治体の事業であったごみ処理を、突然「机上の計画」で県内自治体を6分割しただけのもので、合理的必然的な理由がない。6ブロックのうち動きがあるのは、津山ブロックと備前ブロックだけ。津山ブロックも地元が市側の対応に不満が高じ裁判に持ち込まれている。備前ブロックも1999年の協議会時代から、首長と議長のみの出席の密室会議であった。2001年の東備町村議員ネットワークで議事録の公開を申し入れてからようやく開示請求が出来るようになった。しかし傍聴は認められていない。その間和気町大中山、熊山奥吉原、熊山千躰と建設候補地が決められるが、協議会の密室で決められ、住民への説明も推進派と反対派の対立の構図になると「周辺整備費」と言う名目の金額が事業費の2割などとまことしやかに反対派の住民の切り崩しにつかわれ、地区が2分する爪痕を残す結果になった。
3度の失敗に学ぶべきは、密室での議論は止めて、公開の協議会、住民協働でゴミ減量化の取り組み、公開の説明会、「環境負荷」と「財政負担」を住民が理解出来る説明をする努力が必要である。 しかし2007年3月の新計画を受けてからの協議会は学ぶべき教訓を正反対の「強引に進めること」に終始した。
検証(2) 迷惑施設を地元に欲しがる理由(わけ) 住民団体の説明会を求める要求も門前払いを続け、建設候補地を瀬戸内市と赤磐市の2カ所に決める。これは瀬戸内市のお荷物になっている錦海塩田を候補地にすることで、多額の国庫補助金をあてに解決したいという瀬戸内市のお家事情が見え見えである。誰が見ても台風で大水が出れば3メートルは水没するという錦海塩田に大型施設を作れるとは思わない。その証拠に翌年には錦海塩田は破産した。これは和気町の大中山が候補地になった理由も、大型畜産農家の糞尿処理施設建設と抱き合わせるという、とんでもない事情で候補地となった。新聞にすっぱ抜かれて協議会で、さすがにひんしゅくをかって取り下げている。熊山の千躰も、駅前の水害対策を抱き合わせるという事情が明らかになっている。広域化の弊害の一つはこうした建設地に名乗りを上げるのは「おいしいメリット」を当てにする首長が後を絶たない。
検証(3) 地元の合意もないのに一部事務組合の設置を強引に進める 一部事務組合は構成自治体の合意のもと、事業を進めるための組合である。しかし2008年9月議会で、建設候補地の合意がないまま建設ありきという強引な理屈で採決をした。この時点で、3市1町の温度差が明確になっていた。和気町は担当委員会で否決。本会議で、1票差で可決。瀬戸内市は、委員会、本会議とも賛否同数、結果議長採択。備前市は委員会が2日間にわたる激論の末可決。しかし建設地の赤磐市議会だけは3人の反対者のみで、賛成多数で可決。これを深刻な事態と受け止めなかった組合管理者の責任は大きい。
検証(4) 相変わらず「周辺整備事業」を鼻面にぶら下げた 建設候補地の3地区からの要望を区長にまとめさせている。積算して10億円の見積もりを組合議会に「参考資料」といって配布している。これについて、備前市、瀬戸内市の両議員からは「あきれて声もでない」「問題外だ」と憤慨。赤磐市への不信感は頂点に達し、脱退の理由の一つになっているだろう。ごみ処理事業に投入される税金の重みを正副管理者は感じていないと言わざるをえない。
検証(5) 備前市、瀬戸内市の両議会は満場一致で脱退を決議 赤磐市は9月議会中にもかかわらず、10月7日に備前市、瀬戸内市両市が広域一部事務組合から脱退を表明された。「既存施設の改造と減量化で行えば広域より安い」「3市1町のごみの受け入れを地元住民は理解してくれるのか」「国の補助制度が既存処理施設の長寿命化にも計画される」という説明だった。両市議会とも脱退の採決には、反対者は1人もいなかった。これは各自治体の事情、利害に差があることを理解できないまま、強引に暴走してきた赤磐市のやり方を2市の市民が拒否した結果と言える。 検証(6) 国と県は結託して広域化を押し進める。
検証(6) 国と県は結託して広域化を押し進める 2009年12月、和気町議会が脱退について賛否の採決をする前に赤磐市長と和気町長が当てにしている国庫補助金(循環型社会形成推進交付金)の交付要綱を確認した。それによれば、交付要件(1)人口5万人以上(2)面積400平方キロメートル以上のどちらかが必要となっている。しかし「ただし」過疎地域を含む場合は対象となる、とある。県に問い合わせたら、間髪を入れず「受理されます」。その後、対応した職員の上司から「国が判断することだからコメントできない」と否定の電話。そこで中四国地方環境事務所に問い合わせしたらO氏が「受理されます」との返事。しかし、20分後にO氏から電話で、「まだ和気町が結論を出していない段階で先ほどの返事は公にしないでほしい。あくまで広域を進めたい」とのこと。
交付要綱を読む限り明確に過疎地域が含まれる場合は対象となると記載してあるのに、県も国もあくまで広域を進めたいと、情報を隠そうとする態度にあきれた。逆に言えば、地方自治体は自分たちの意志で選択することさえ困難であるということが明らかになった。
▼ごみ政策は住民協働参画で 今、時代は「脱・焼却」「脱・埋め立て」「脱・国の補助金漬け」である。世界で、国内で「ゼロ・ウエイスト」(ごみゼロ)政策が注目され、取り組まれている。
データ(1) 日本の焼却炉は海外の焼却炉の数倍 <1700基以上> 日本には海外の一般廃棄物焼却炉すべてをあわせた数の数倍になる1700基以上の焼却炉がある。焼却炉は様々な有害物質を環境中に放出するだけでなく、ごみを安易に処理することで、貴重な資源の無駄使いを促進する。施設の建設・改修に年額8000億円にも及ぶ莫大な税金を使っている上、その維持管理は年々高額になり、自治体の財政を圧迫している。 データ(2) 国の補助金漬けの自治体 財政的に困窮しているにもかかわらず、多くの自治体が大規模な公共事業を推進している背景には「からくり」がある。国庫補助だけでなく、国から地方に流れる交付金により地方債が償還(返済)されている。国庫補助と地方交付金による償還などを合わせると国から自治体への補助は事業費の70〜85%におよんでいる。2010年度末には国と地方を合わせた長期債務残高はGDP(国内総生産)の1.8倍にあたる862兆円。すでに先進国で最悪の水準だ。2010年度の国家予算が92兆2992億円だからいかに借金が大きいか明らかだ。結局税金となって国民全体がそのつけを払わされることになる。赤磐市長が当てにしていた「国庫補助金」はこの借金を上乗せするもので、これを地方交付税の先食いという。 データ(3) これからのごみ政策 新たなごみ政策はゼロ・ウエイスト(ごみゼロ)社会。これは単に「ごみを減らすこと」ではなく、幅広い意味がある。
▼これからの課題 今当市では、ごみ問題がようやくスタートラインに立ったところである。10年余り、あまりに大きな代償を払い遠回りをしてきた。ここから新たなごみ政策にそって住民協働で取り組んでいく。
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